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【内部告発】まるでナチスの監視「松本問題に触れてはいけない」在京テレビ局員が明かす内情

『ありがとう、松ちゃん』より

■コンプライアンスチェックする「審査考査部」の権限拡大

 今春、大きな話題になったテレビドラマ「不適切にもほどがある!」(TBS系)の一場面で、令和から昭和にタイムスリップしてきた中学生男子が「地上波でおっぱいが見たいんだ!」と叫んでいましたが、おっぱい、暴力的な描写、容姿いじり……、いまテレビの現場では、コンプラの嵐により、NG項目はどんどん増え続けています。

 特に「審査考査部」と言われるようなコンプライアンスをチェックする部署の権限が大きくなりました。そうした中で、上に企画書を出しても、「これと似た企画ってどこかで実際に放送しているの?前例ないんだよね? 前例がないというのは、リスクでしかないから、そういうリスクがある企画は、ちょっといまは難しいよね」と突き返されてしまう。

「それでもテレビマンは知恵を絞って、面白い番組を追求しないといけない」って、テレビ局出身のメディア評論家なんかは、高みから偉そうなことを言っていますが、そんなの理想論であって、優秀なテレビマンであればあるほど、早々にテレビには見切りをつけて、より自由度の高いNETFLIXやAmazonなどに移籍しているのが実情です。今や「動画を撮影して個別に配る行為」はテレビ局の特権では無くなったのです。

 また、さかのぼること約10年前、大手広告代理店・電通の社員だった高橋まつりさんが過労自殺したことをきっかけに起こった「ブラック企業で起こるハラスメント問題」に端を発したコンプラに加えて、テレビ業界も働き方改革がどんどん導入されるようになり、良くも悪くもホワイト化が進みました。

 過剰労働やハラスメントに対して注意が向けられ、そこで犠牲になる人がいなくなってきたことは明らかに良い面だと思います。しかし一方で、制作現場のホワイト化を理由に、職場が無毒化して、過剰なことがやりづらくなってもいきました。全ては「程度の問題」なのですが、何しろコンプライアンスの名の下に上からの監視やコスト的な締めつけも厳しくなってしまった。だから現場は硬直化する一方なんです。

「現場をホワイトにした代わりにコスパとタイパをもっと意識しろ」という上からの理不尽な指示や方針により、やる気や意欲も削がれていきます。現場の士気は、だだ下がりしています。残業しないように局員の指示に従って定時にみんな現場から追い出されますが、外で「隠れ残業」をやっているのが現状です。そんな事情を局員はみんな知っている。

 でも黙認です。これが実情です。会社はコンプラを意識してホワイトになった? そんなわけありません。だからメンタルをやられて、絶望して、この業界から去っていく若手テレビマンも少なくありません。一方で、老害たちは、テレビという沈みゆく巨大船にしがみついている。このようにテレビが終わったコンテンツ化する中で、今後、松本さんは地上波に復帰できるのか? その答えは明白でしょう。

 性加害、性的な行為はなかったとしても、妻子ある松本さんがホテルのスイートルームという密室で、後輩芸人が集めてきた女性たちと合コンをしていたことを不快に思うスポンサーや視聴者がいる限りは、地上波の復帰は難しいのではないでしょうか。

 また、たとえ、万が一、地上波に復帰できたとしても冒頭で紹介したような松本さんの過去の自身の性癖に関する過激な発言だったり、今回の一連の疑惑については、SNS全盛の世の中において、デジタル・タトゥーとして今後もずっと蒸し返されるでしょうから、極めて険しい道のりだと言わざるをえません。

 結局のところ、テレビが繁栄し、そしてネットの興隆により衰退の一途をたどり、まさに終焉を迎えつつある――そんな時代の転換期において、松本人志というタレントは、テレビという、ただただ空虚な世界の中で、電波芸者として踊らされ続けてきただけなのかもしれません。 

■局内の監視はまるでナチス!

 今回の「松本問題」に関してテレビ局では、内部はもちろん、外部のスタッフにまで緘口令のように他言無用を強いられる空気が支配しているのは事実です。誰かがネガティブな情報を流さないように、執行部は局長クラスを、局長クラスは局員を、局員は現場の制作会社を、制作会社はアルバイトを常に監視し、コンプライアンスに違反していないかチェックしている。

 それはまるでナチスの監視体制を思わせませんか。もし制作会社が雇ったアルバイトが違反したらその制作会社は局から仕事を失います。局員に違反があれば、その局員は間違いなく干されます。空気に反した真っ当な発言をしたディレクターが全くの別部署に飛ばされたなんて話はよく聞く話です。

 何事もない様に。と常に監視しているから、誰もが口を閉ざしている。だから、テレビ制作の現場から「松本問題」についての声が全く発信されないのです。また、制作現場に対しても、毎日、大量のコンプライアンス遵守に関するメールが一方的に送りつけられて、上層部から現場まで組織全体が萎縮し、機能不全に陥っています。

 結局のところ、テレビの上層部たちは、一刻も早く、この問題が風化して、忘れ去られればいいとさえ思っているのではないでしょうか。松本人志という鬼才を社会的にリンチして葬ってしまった。この事実は非常に恐ろしいことです。

『ありがとう、松ちゃん』より構成〉

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